ダンサー・イン・ザ・ダーク Dancer in the Dark
2000年・140分 [OFFICIAL SITE]http://www.dancerinthedark.net/
監督; ラース・フォン・トリアー
出演; ビョーク,カトリーヌ・ドヌーヴ,デヴィッド・モース,ピーター・ストーメア,ジャン=マルク・バール,ジョエル・グレイ
2001.5.19
近所のリバイバル専用シアター、シネマつかしんで、「ダンサー・イン・ザ・ダーク」を見る。
予備知識ほとんどゼロで臨んだ訳だが、
あまりにも救いの無いストーリー、観た後、どっと疲れが襲う。
しかし、ただ単純に「つまんない映画」ではない。
ちょっとすぐにはうまく言葉にまとめられそうに無いので、
また後日整理してみたい。
2001.5.23
一言で言うなら
なんちゅう映画をつくんねん!
と言う感じ、良くも悪くも。
まず最初に違和感として感じたのは、ハンディDVによるドキュメンタリ風のタッチである。
「粗い」と言ってしまえばそれまでだが、
その手法が、とても生々しくあたかも現実の事であるかのように錯覚させる。
一方、セルマの妄想として描かれるミュージカルパートは華麗かつ優美である。
この対比が、より「現実」の厳しさを際立たせる効果を生んでいる。
後半では、息子への思いと、迫り来る死への恐怖の間で揺れ動くセルマの苦悩が、痛いほど伝わってくる。
この作品を「ドラマ」として捉えるのはどうか?
この作品において、ストーリーは、ぶっちゃけた話さほど重要視されていない。
裁判その他シーンのぶった切り方があまりに豪快なので、
シナリオの展開に不満を漏らす人も多い様だ。
しかし、この作品に「悲劇」としての完成度を求めるのは的外れのような気がする。
単に、ミもフタも無い悲劇的なストーリーが欲しければ、映画じゃなくても
「ロミオとジュリエット」だとか「アルルの女」とか「蝶々夫人」とかさ、
世の中に山ほど転がってるでしょう。
この作品は、そういうモノを目指してるんじゃないと思う。
監督の思惑なんて俺は知らんけど、
悲劇的なストーリーを盛り上げ盛り上げして、っていうつもりはないでしょ、多分。
もしそんな気があれば、法廷のくだりとかもっとねちっこく描写するはずだ。
それをしないのは、よーするに、「イメージ映像」だからなんだと思う。
日本での公開に先立ってリリースされたサントラ「セルマ・ソングス」の、
ミュージッククリップというかプロモーションビデオというか、う〜ん、
TMNetworkが「CAROL」でやってた事と同じじゃなかろうか?
組曲の映像化というか、架空のお話を音楽と映像で実体化しちゃうというアレである。
そう思えば、「ダンサー〜」の「現実パート」が異常に生々しい分、かなり贅沢な作品である。
閑話休題。
だから、アメリカでロケする必要も無いし、アメリカっぽい雰囲気を出す必要も無いし、
濡れ衣(じゃなくなっちゃうけど)のシーンや、法廷のシーンも、
馬鹿丁寧に描く必要ないんだろう。
ビョークが「セルマ」になりきって、歌って踊り狂って泣き叫ぶ140分。
そういう「映像」なんだと思う。
それを、何処の誰だか知らないが、
「感動の大作悲劇ミュージカル!」なんて宣伝打っちゃうもんだから、
みんな、「南極物語」とか「クレオパトラ」みたいな話かと勘違いしちゃうんだろう。
結言
正直言って、この作品について、単純に「感動した」等と言うつもりはないが、
この作品を見て、単なるつまんない映画、暗くて気分悪い映画、
としか見れない人達はちょっとかわいそうである。
初デートで行くのはどうかと思うが、
ビョークやカトリーヌ・ドヌーブやラース・フォン・トリヤーのファンな人はもちろん、映画が好きな人は一見の価値ありとみる。