ふたり 1990(1991?)年・155分 PSC/ギャラック/NHKエンタープライズ
監督: 大林宣彦
脚本: 桂千穂
原作: 赤川次郎
音楽: 久石譲
出演: 石田ひかり/中嶋朋子/尾美としのり/増田恵子/岸部一徳/富司純子/柴山智加/中江有里/島崎和歌子/吉行和子/竹中直人/奈美悦子/藤田弓子/入江若葉
確かにここは舞台裏。
華やかなライトも当たってないし、暗い。
だけどここからは、世界のすべてが見えるわ。
喜びも悲しみも、人の心のすべてが。
2001.6.16
大林宣彦の「ふたり」を借りてきて観た。
中学のころ、TVで後半だけ見たっきりだったけれど、なにかこう心に残った作品だった。
ストーリーは、赤川次郎原作とあって、
主人公と、主人公にまとわりつく(?)幽霊との友情(姉妹愛か?)物語、
と、他愛ないものなのだが、大林監督の十八番である叙情的な映像は秀逸。
観た後に、切なさというか名残惜しさを素直に感じる良作である。
ただ、前半に多用されている特撮シーンがちゃちいのが残念。
・・・というか往年の大林風であるな。「ねらわれた学園」とかを彷彿とさせる。
駅伝のシーンとか花火のシーンとかさ、もう少し撮りようがあるだろうに。
ま、話の本筋とはあんまし関係ないのでどうでも良いが。
この作品の魅力:
なんといっても妙齢の中嶋朋子が非常に印象的である。
いわゆる、「蛍ちゃん的あどけなさ」が抜け、かつ、今のちょっとスレた感じになる寸前の微妙な時期の作品である。
「妹」「年下の女の子」的なイメージが先行しがちな彼女の、「お姉ちゃん」ぶる姿が非常にチャーミングである。
この作品自体の出来を冷静に評価するならば、
初主演の石田ひかり(この頃は才能を感じさせる演技してる)の演技力と、
珍しく自己主張し過ぎない久石譲の音楽に負うところが大きいと思うが、
個人的には、やはり中嶋朋子である。うん。
CAST考察:
岸部一徳、富司純子も流石の演技だが、
ライバル(?)役のワッコさんも目ギラギラしてていい感じ。
そうそう、中学当時は、意識して見てなかったけど、竹中直人がすごいチョイ役で出ているのも発見。
芸風は今と同じだが、演技が堅くて今よりなんか年寄りくさかった。ここで特筆すべきは、尾美としのりであろうか。
柄にもなく(?)2枚目役を演じているが、これがまたいい。
これが、流行の人気俳優であれば、この作品は一気に陳腐なモノに成り下がるだろう。
例えば、実加のピアノ発表会で、一人雨の中で佇むあのシーン。尾美じゃなくって誰が演じることができようか。
余談:
作品で見る尾道の風景は、坂道の多い港町
・・・ってことで一見、我が故郷佐世保を思い出すのだが、よく見ると全く違う種類の風景である。
斜面にびっしり生えた家並みとそこから見下ろす港と沖の島々、
という構図は言葉で示せば同じなのだが、そこから見える風景は全く異質の物である。具体的に言えば、尾道の、行き交う渡船、街の真ん中を貫いて東西へと繋がる2号線と線路、
あの喧騒と情緒の同居する生活感が、佐世保の風景にはない。もっと無機質で、殺風景な景色なのである。感覚的な言葉で無理矢理表現するならば、佐世保の風景は、軽くて、間が抜けている。
尾道はもっと古めかしくて、重い、でも着飾ってない。そんな感じだ。#どちらがいい、とかそういうんじゃなくて。
もし、気になるひとがいるのなら、「永遠の1/2(1987)」でも借りてみるといい。
佐世保と尾道の雰囲気の違いがよく分かると思う。撮影されたのもほぼ同時期だし、
3〜4歳分幼いけど、中嶋朋子の雰囲気もそう違わない(違うかな?)ので、
風景と風景が与える印象の比較には適当だと思う。ちなみに竹中直人と吉行和子もやはりチョイ役で出てたりする。
#ただし、映画として面白いかは別問題。原作の小説は面白いけどね・・・。